・保育士の平均年収はどれくらい?
・経験を積めば年収は上がるの?
・年収を上げる方法を知りたい!
保育士不足を懸念して、政府は保育士の給料を上げるための様々な施策を打ち出しています。
その効果もあり、保育士の年収は近年右肩上がり。しかしそれでもなお、多くの保育士が低収入で悩んでいるのが現状です。
この記事では、「保育士の平均年収の実態」と「年収を上げる方法」を解説します。この記事を最後まで読めば、保育士の年収が丸わかり。そして、年収を上げるためのステップがわかるようになります。
保育士の年収は、管轄先や年齢、都道府県などの条件によって100万以上の差が出ることもあります。自身の給料にも大きく関わってくることなので、年収の違いについて理解しておかなければ損をしてしまうかも。
こんにちは。保育士歴8年・元保育士のあんと申します。
保育士年収の理解を深め、年収アップをめざしていきましょう。
保育士の給料事情【年収・月収の平均】
まずは保育士の給料事情をみていきましょう。注目ポイントは、以下の2点です。
- 保育士の平均給与
- 保育士の年収推移
保育士の平均給与
厚生労働省令和元年の賃金構造基本統計をもとに、保育士の平均給料を下の表にまとめました。
年度 | 月収 | 賞与等 | 年収 |
---|---|---|---|
2019年 (令和元年) | 24万4500円 | 70万600円 | 363万4600円 |
この数字は保険料や税金が引かれる前のものなので、手取りはもっと低くなります。
一方で国税庁の令和元年分民間給与実態統計調査によると、日本全体の年収は503万。
上記の結果をまとめると、保育士の年収は日本全体の年収よりも140万ほど低いことになります。
給料の水準はやはり保育士は低めですね。
保育士の年収推移
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、保育士の給料の推移を下の表にまとめました。
年度 | 月収 | 賞与等 | 年収 |
---|---|---|---|
2020年(令和2年) | 24万9,800円 | 74万7,400円 | 374万5,000円 |
2019年(令和元年) | 24万4,500円 | 70万600円 | 363万4,600円 |
2018年(平成30年) | 23万9,300円 | 70万7,700円 | 357万9,300円 |
2017年(平成29年) | 22万9,900円 | 66万2,500円 | 342万1,300円 |
保育士の年収は毎年上がってきているのが、上の表からわかります。これは保育士の給料をあげる政府の取り組みが大きく影響しているでしょう。
2017年と2020年の年収を比較すると、4年間で32万以上も年収が高くなっています。
保育士の必要性や専門性の認知とともに、低収入の問題がようやく世間に届きはじめました。
今後もさらなる給料アップが期待できるでしょう。
保育士の平均年収を条件別でみる
保育士の年収は、年齢や都道府県によっても違います。ここからは、条件別で保育士の年収をみていきましょう。
- 公立保育士・私立保育士
- 年齢別
- 都道府県別
3つの項目に分けました。気になるところからチェックしてみてください。
公立保育士・私立保育士
以下の表は、公立保育士と私立保育士の平均給料をまとめたものです。
公立保育士
公立 | 月給 | 年収(賞与込み) |
---|---|---|
施設長 | 63万2982円 | 759万5784円 |
主任保育士 | 56万1725円 | 674万700円 |
保育士 | 30万3113円 | 363万7356円 |
私立保育士
私立 | 月給 | 年収(賞与込み) |
---|---|---|
施設長 | 56万5895 円 | 679万740円 |
主任保育士 | 42万2966円 | 507万5592円 |
保育士 | 30万1823円 | 362万1876円 |
公立保育士の給料が、私立保育士の給料より高いことがわかります。役職のない保育士はあまり大差はありません。
しかし主任保育士・施設長の役職になると公立保育士の給料は一気に上がります。
公立・私立の施設長の年収差は、80万以上。主任保育士だと、166万以上の差があります。
そもそもなぜ、公立と私立で給料が違うかというと、それは保育園の管轄先が異なるから。公立保育園の管轄先は、自治体(市区町村)で、私立保育園の管轄先は主に株式会社や社会法人などの民間団体です。
公立保育士は公務員の職員になります。
公務員だと年功序列の給料システムがあるので、役職がつくと大幅な給料アップが見込めます。
以下の記事では、保育士のボーナス事情をまとめています。公立保育園と私立保育園のボーナスの差やボーナスがもらえる保育園の選び方などを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
》【2022年最新】保育士のボーナスはいくら?平均金額や支給日を解説
年齢別
以下の表は、年齢別による保育士の平均給料です。
年齢 | 月給 | 賞与 | 年収 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 20.96万円 | 48.58万円 | 3,001,000円 |
25~29歳 | 23.12万円 | 72.30万円 | 3,497,400円 |
30~34歳 | 24.02万円 | 75.66万円 | 3,639,000円 |
35~39歳 | 24.76万円 | 76.01万円 | 3,731,300円 |
40~44歳 | 25.24万円 | 81.49万円 | 3,843,700円 |
45~49歳 | 25.61万円 | 83.76万円 | 3,910,800円 |
50~54歳 | 27.88万円 | 96.66万円 | 4,312,200円 |
55~59歳 | 28.13万円 | 92.78万円 | 4,303,400円 |
60~64歳 | 26.43万円 | 78.07万円 | 3,952,300円 |
65~69歳 | 24.38万円 | 66.75万円 | 3,593,100円 |
年齢が高くなるにつれて、給料も上がっていくのがわかります。
年収に着目すると、新人や若手に該当する20〜24歳の保育士年収は、300万ちょっと。手取りに換算すると、だいたい240万くらいになります。
一方で、同じ20代の25〜29歳の年収は、手取りでおよそ280万。
「保育士の平均年収は300万くらい」とよく耳にするかと思いますが、このデータでは手取りで年収300万を超えるのは40代以降になります。
若い保育士が離職を考える原因の一つには、収入の低さに加え、保育士の昇給率の悪さもあるでしょう。
保育士の手取りに関する情報は、以下の記事で解説しています。
》【2022年最新】一目でわかる保育士の給料【手取りの早見表】
手取りが13万以下で悩む保育士に向けて、以下の記事で解決策を紹介しています。
》保育士の手取り13万はガチ話。給料を上げる方法はズバリ〇〇!!
都道府県別
下にある表は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに作成した「保育士の年収が高い県ランキング」です。
自分の勤めている県やこれから就職を検討している県の順位は何位でしょうか?
順位 | 都道府県 | 月収 (万円) | 賞与等(万円) | 平均年収(万円) |
---|---|---|---|---|
1 | 栃木県 | 29.14 | 85.27 | 434.95 |
2 | 千葉県 | 28.25 | 94.86 | 433.86 |
3 | 愛知県 | 25.69 | 95.34 | 403.62 |
4 | 神奈川県 | 26.95 | 79.21 | 402.61 |
5 | 京都府 | 27.07 | 75.01 | 399.85 |
6 | 東京都 | 27.76 | 65.37 | 398.49 |
7 | 兵庫県 | 26.53 | 74.31 | 392.67 |
8 | 大阪府 | 25.39 | 80.62 | 385.3 |
9 | 静岡県 | 24.72 | 85.52 | 382.16 |
10 | 青森県 | 24.57 | 86.98 | 381.82 |
11 | 宮崎県 | 24.04 | 91.18 | 379.66 |
12 | 岐阜県 | 23.36 | 95.33 | 375.65 |
13 | 長崎県 | 23.82 | 87.02 | 372.86 |
14 | 滋賀県 | 26.09 | 56.22 | 369.3 |
15 | 高知県 | 24.12 | 79.83 | 369.27 |
16 | 福井県 | 22.79 | 93.91 | 367.39 |
17 | 茨城県 | 23.57 | 83.24 | 366.08 |
18 | 埼玉県 | 24.85 | 65.93 | 364.13 |
19 | 奈良県 | 23.41 | 79.82 | 360.74 |
20 | 広島県 | 21.67 | 100.35 | 360.39 |
21 | 石川県 | 23.71 | 74.32 | 358.84 |
22 | 香川県 | 22.13 | 90.42 | 355.98 |
23 | 福岡県 | 24.02 | 67.63 | 355.87 |
24 | 三重県 | 23.07 | 78.53 | 355.37 |
25 | 鳥取県 | 23.11 | 77.33 | 354.65 |
26 | 富山県 | 23.38 | 67.1 | 347.66 |
27 | 山口県 | 21.25 | 92.09 | 347.09 |
28 | 鹿児島県 | 22.61 | 74.55 | 345.87 |
29 | 長野県 | 23.29 | 65.84 | 345.32 |
30 | 岩手県 | 21.6 | 83.79 | 342.99 |
31 | 宮城県 | 23.72 | 58.19 | 342.83 |
32 | 大分県 | 22.41 | 73.44 | 342.36 |
33 | 熊本県 | 22.08 | 75.56 | 340.52 |
34 | 沖縄県 | 23.14 | 59.64 | 337.32 |
35 | 徳島県 | 23.39 | 54.61 | 335.29 |
36 | 島根県 | 22.28 | 67.19 | 334.55 |
37 | 山梨県 | 21.89 | 70.29 | 332.97 |
38 | 佐賀県 | 22.11 | 63.07 | 328.39 |
39 | 群馬県 | 21.13 | 71.89 | 325.45 |
40 | 岡山県 | 23.11 | 47.96 | 325.28 |
41 | 新潟県 | 21.68 | 62.84 | 323 |
42 | 和歌山県 | 22.05 | 55.9 | 320.5 |
43 | 愛媛県 | 21.36 | 63.44 | 319.76 |
44 | 北海道 | 21.96 | 53.03 | 316.55 |
45 | 山形県 | 20.69 | 68.06 | 316.34 |
46 | 秋田県 | 20.81 | 62.07 | 311.79 |
47 | 福島県 | 21.64 | 40.99 | 300.67 |
都道府県によって、給料の差が結構あります。
1位の栃木県と、最下位の福島県の平均年収の差は、135万近くも。
給料に差が出る理由は、最低賃金や処遇改善の取り組み方が各都道府県で違うから。
上位に、千葉や神奈川、東京、大阪がランクインしていることから首都圏の方が最低賃金が高く、処遇改善が進んでいることが伺えます。
保育士の年収がなかなか上がらない2つの理由
保育士の年収は、上昇傾向にあると先述しましたが、給料の低さに不満を抱える保育士は多いです。
その原因は、子どもの命を預かる責任の重さや時間外労働といった保育士の仕事内容が、今の給料に見合っていないと感じるからでしょう。
低収入による保育士の不満の声や離職理由は、国に届いているはずなのに、給料が思うように上がらないのはなぜなのか。
考えられる要因は以下の2つです。
- 国の財源に余裕がない
- 保育にかけるお金を国が重要視していない
公務員保育士の給料は公務員として支払われるので、ここでは私立保育園の給料にスポットを当ててお話しています。
①国の財源に余裕がない
1つ目の理由は、国の財源に余裕がないこと。
保育士の給料は、主に国から支給される運営費や補助金によってまかなわれています。これらの資金の出所は、国の財源です。
その財源が日本はかなり不足していて、財政赤字な状態。
そのため、大きなコストがかかる「給料一律で引き上げ」に国はなかなか動いてくれません。
そもそもお金がない日本。低賃金問題の解決にはかなり時間がかかりそうですね。
②保育にかけるお金を国が重要視していない
2つ目の理由は、保育にかけるお金を国が重要視していないこと。
国は、子ども一人当たりにかかるお金や運営に必要な資金を想定し、運営費を決めています。
しかしその想定額がかなり低いため、仕事内容に見合った給料を保育士はもらえません。
「想定額の低さ」を示すわかりやすい例の一つは、保育士の配置基準。
国は子どもの人数に合わせて、必要な保育士の数を想定。そして、配置基準に合わせた人件費を支給しています。
しかし国が定めた保育士の数だけでは、円滑に保育は回せません。なので配置基準より多く保育士を雇っている保育園も多いでしょう。
年中・年長になると子ども30人に対して保育士1人。これだと一人ひとりの成長を丁寧に見てあげられません。
増えた保育士の人件費を国が支給してくれるわけではないので、必然的に保育士一人当たりの給料が下がってしまうのです。
「そもそもなんで保育士の給料は安くて当たり前になったの?」という疑問を持った方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
》保育士の給料は安くて当たり前と言われる4つの理由と給料のあげ方
保育士の平均年収を上げる方法4選
ここからは、自分でできる年収アップの方法を紹介します。年収を上げたいと思っている方はぜひ最後までお読みください。
- 園長や主任に昇格する
- キャリアアップ制度を活用する
- 公立の保育士になる
- 給料の良い園に転職をする
①園長や主任に昇格する
年収を上げる方法の一つ目は、園長や主任に昇格をすること。園長や主任に昇格すると、役職手当がついて年収が高くなります。
責任はもちろん重くなりますが、年収アップが良いモチベーションになるはず。
役職の枠は少ないので、チャンスがきたら積極的に昇格を目指してみるのもいいでしょう。
②キャリアアップ制度を活用する
年収を上げる方法として、キャリアアップ制度の活用もおすすめ。
キャリアアップ制度とは、政府による処遇改善の取り組みのひとつ。
従来の役職である園長・主任保育士の他に、新たな役職が3つ新設。
若手や中堅保育士がキャリアを積み上げやすくなりました。
新たな役職は、以下の3つ
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダー
制度を活用できるのは、保育経験3年以上の者。定められた条件をクリアし、役職ごとに必要な研修を受講。研修修了後、役職が発令されれば見事、役職が認定されます。
役職認定後は、以下の役職手当がつきます。
副主任/専門リーダー…月額最大4万円支給
職務分野別リーダー…月額最大5千円支給
職務分野別リーダーになれば月額5千円で、年収は最大6万円アップ。専門リーダー、副主任になれば月額4万円で最大48万円も年収が上がります。
ただし、役職を獲得できる人数は園ごとに上限があります。なのでキャリアアップ制度に興味がある人は、園に詳細を確認してみましょう。
③公立の保育士になる
私立の保育園で働いている方は、公立の保育士になることで年収アップを目指すことができます。
公立保育士の年収アップのポイントは、公務員の特徴の一つである昇給率が高さ。
また退職手当がしっかりつくので、給与支給額のトータルは私立保育士よりも高いでしょう。
なお公立保育士になるためには、就職希望の地方自治体で実施する採用試験合格が必須です。
自治体によって受験資格に年齢制限を設けているので、受験前に必ずチェックしましょう。
④年収の良い園に転職をする
最後に紹介する方法は、年収の良い園に転職をすること。
都道府県や各園の処遇改善の取り組み方によって、保育士の給料は各園に違いが生じます。
基本給が高い保育園や給料の加算手当が厚い園だと、年収アップは大いに期待できるでしょう。
また年収を下げないために、引かれるお金に着目することも大切。
給食費や交通費代の負担が少ない園や一人暮らしの人は家賃手当がついている職場を選ぶと支出を下げられます。
給食費の支出例をみてみましょう。
月20日出勤ならば、
1日400円負担:年9万6000円のマイナス
1日300円負担:年7万2000円のマイナス
1日200円負担:年4万8000円マイナス
年間で計算してみると大きな金額。なので年収を下げたくない人は、給食費や交通費などの出ていくお金もしっかり確認しましょう。
転職する際の私の絶対条件は、「家賃手当があるかどうか」です。家賃手当の活用で、物価の高い地域でも私は十分生活できました。
まとめ:保育士の年収は右肩上がりだが、自分で年収を上げる努力も必要
以下のような条件により、同じ保育士でも年収は異なります。
- 公立保育士または私立保育士
- 年齢
- 都道府県
年収の違いを知っておけば、年収を上げるためのステップを踏みやすくなるでしょう。
少しずつ進んでいる処遇改善の効果で、保育士の年収は年々上がってきています。
このまま保育士の年収アップが一気に進んでほしいですが、国は財政が不足しているため大きな期待はできません。
そのため、自分で年収を上げていく努力も必要になります。
- 園長や主任に昇格する
- キャリアアップ制度を活用する
- 公立の保育士になる
- 年収の良い園に転職をする
大なり小なり行動は必要ですが、行動することで年収は上げられます。
理想の年収を目指して、ぜひ自分にできることから始めてみてください。
以下の記事は、保育士の平均月収や年収、手取りやボーナスなど、保育士の給料を総まとめにしたものです。保育士の給料についてもっと知りたい方は、ぜひご覧になってください。