・保育士の給料が「安くて当たり前」と言われる理由は?
・保育の仕事で低賃金のイメージが定着しちゃったのはなぜ?
今回はこのような疑問に答えていきます。
この記事で解説する「保育士の給料が安くて当たり前と言われている理由」と「給料をあげる方法」を理解すれば、世間の「保育士=低賃金」というイメージなんて気にせず自分の意思で給料をあげていくことができます。
この記事を書く私は、保育士歴8年の元保育士です。
実際に私もここで紹介する方法で、ある園では給料が月々5000円アップしたり、ある方法で月収を15万円から20万円にあげたりすることができました。
先に種明かしをすると、私が給料をあげた「ある方法」とは、キャリアアップ制度の活用と転職です。この点については、後半で詳しく解説していきますね。
では、さっそく「保育士の給料が安くて当たり前と言われる理由」について説明していきます。
給料が安くて当たり前と言われている4つの理由
保育士の給料は安くて当たり前に思われている理由は、以下の4つ。
- 誰にでもできる仕事だと思われがち
- 簡単に保育士資格が取得できる
- 学歴関係なく働ける環境
- 保育士が軽視されていた昔の名残がある
順番に解説していきますね。
①誰にでもできる仕事だと思われがち
1つ目の理由は、保育士の仕事は誰にでもできると思われがちなところにあります。
- 子どもとただ遊んでいるだけ
- 子どもをただ見ているだけ
悲しいことに、こんなイメージを一部の人には持たれています。
保育士の必要性や専門的役割の理解が少しずつ広まってきているので、もっとたくさんの人に認知してもらいたいですね。
保育士は子どもの命を守る責任のある仕事。誰にでもできる仕事なんかじゃない!
②保育士資格が簡単に取得できる
2つ目の理由は、保育士資格が簡単に取得できるからです。
保育士資格は、厚生労働省が指定する「指定保育士養成施設保育学校(大学や短大、専門学校等)」を卒業すれば、卒業と同時に資格を取得。
もう一つの資格取得方法は、国家試験に合格すること。
要するに保育士資格は「卒業すれば資格をもらえる」「勉強すれば資格をもらえる」というイメージ。
資格取得が高難度の医師や弁護士などと比べれば保育士資格の価値は低くみられがちです。
③学歴関係なく働ける環境
3つ目の理由は、保育園は学歴に関係なく働ける環境であること。
保育士資格は大学や短大、専門で取得できるため保育士の学歴は幅広いです。
一定の条件をクリアすれば、国家資格の受験資格は高校卒でも取得可。
そのため「学歴問わず」といった印象があり、それが保育士の低賃金のイメージを高めているのでしょう。
④保育士が軽視されていた昔の名残がある
4つ目の理由は、保育士が軽視されてきた歴史の中にあります。
昔は「子育ては家庭でするもの」という考えが強く、保育園に子どもを預けることがよく思われていない時代。
保育士の仕事は「子育ての延長だ」くらいにしか思われず、社会から軽視されていた職業。その結果、低賃金の仕事となりました。
「保育士は給料が安い仕事」という昔の名残が、そのまま現代に残っています。
保育士の給料事情
ここからは、保育士のリアルな給料事情に迫ります。
世間のイメージ通り、保育士の給料が安いのかどうかをチェックしてみましょう。
保育士の平均月収は20万前後
厚生労働省の賃金構造基本統計による、令和元年の保育士の平均月収は以下のとおりです。
年度 | 月収 | 賞与等 | 年収 |
---|---|---|---|
2019年 (令和元年) | 24万4500円 | 70万600円 | 363万4600円 |
保育士の平均月収は24万4500円。
しかしこの数字は所得税や健康保険料、厚生年金などが引かれる前の金額なので、実際にもらえる手取り額は20万円前後になるでしょう。
保育士の給料は、私立または公立、役職の有無、継続年数、地域によって差があります。
上記のデータはあくまで平均。なので、手取りが15万以下で生活に苦しむ保育士も中にはたくさんいます。
保育士は子どもの命を預かる責任の重い仕事。それで月収15万以下は低すぎますよね。
保育士の手取りについてもっと知りたいという方は、「【2022年最新】一目でわかる保育士の給料【手取りの早見表】」の記事にも目を通してみてください。
手取りが13万円で悩む保育士の真相と問題解決については、「保育士の手取り13万はガチ話。給料を上げる方法はズバリ〇〇!」の記事でも解説しています。
全職種と比べると保育士の月収は8万円ほど低い
厚生労働省の令和2年度賃金構造基本統計調査結果(雇用形態別)によると、全職種の平均月収は32万4200円。
保育士の平均月収は24万4500円なので、保育士の月収は全職種と比べておよそ8万円も低いです。
全体的にみて、保育士の給料の水準は低いということがわかります。
保育士の月収をみて「24万4500円は高いじゃん!」と思う人もいるでしょう。
しかし繰り返しますが、その数字はあくまで平均。
役職がつかない若手の保育士は特に、給料の低さに悩みやすいでしょう。
以下の記事では、保育士のボーナス事情を解説しています。年収を上げるには、ボーナスが大きく影響するので、気になる方はぜひ目を通してみてください。
》【2022年最新】保育士のボーナスはいくら?平均金額や支給日を解説
保育士の給料が上がらない原因【2つの視点から読み解く】
今度は保育士の給料が上がらない原因を追求していきましょう。
まずは「実際には給料は上がっている」という現状からお伝えしていきます。
給料は実際あがっている。仕事内容に比例してないのが問題
先に事実を整理しておくと、保育士の給料は年々上昇傾向にあります。
以下の表は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにまとめた保育士の給料の推移。
年度 | 月収 | 賞与等 | 年収 |
---|---|---|---|
2020年(令和2年) | 24万9,800円 | 74万7,400円 | 374万5,000円 |
2019年(令和元年) | 24万4,500円 | 70万600円 | 363万4,600円 |
2018年(平成30年) | 23万9,300円 | 70万7,700円 | 357万9,300円 |
2017年(平成29年) | 22万9,900円 | 66万2,500円 | 342万1,300円 |
このデータから保育士の平均年収は、過去3年で32万3,700円もアップしているのがわかります。
保育士の年収事情や年収の上げ方については以下の記事で詳しく解説しています。
》保育士の平均年収が100万も違うワケ【公立・私立、地域、年
ではなんで、「保育士の給料は安い」という不満の声はなくならないのか?それは、以下のような要因が考えられます。
- 給料が上がったのはわかるが、それでも水準はまだ低い
- 一人当たりの仕事量が多すぎて給料が見合っていないと感じる
- 子どもの命を預かる責任の重さが考慮された給料だとは思えない
- 国家資格なのにも関わらず給料が低い
上記の内容を一言でまとめると、「保育士の仕事内容に対して給料が低い」ということ。
保育士の離職理由の上位に「給料の低さ」がありますが、多くの人が「給料と仕事内容の不釣り合いさ」に不満を抱えているでしょう。
保育士の給料が上がらない原因は国の設定金額の低さ
公立の保育士は公務員に該当し公務員の給料表に基づき支払われるので、ここでは私立保育士の給料について解説しますね。
保育士の給料がなかなか上がらないのは国が保育園に分配する設定金額の低さにあります。
保育士の給料の財源は、主に国からの補助金や運営費。
国は子ども一人当たりにかかるお金や運営に必要な資金を設定し、保育園にお金を分配しています。
しかし国の設定金額がとにかく低く、それが低賃金の大元に。
設定金額が低い理由としては、
- 国の財源が少ない
- 保育にかけるお金を国が重要視していない
などがあげられます。
保育園は利益を出す組織ではないので、自分たちで給料を上げるのが難しく、国からの補助金や運営費の中でしか人件費をやりくりできません。
このカラクリも、保育士の給料の低さの原因の一つになっています。
先ほども説明したとおり、保育士の給料は少しずつあがってきていますが、それは処遇改善等加算などの一時金の力が大きいでしょう。
根本にある設定金額をあげない限り保育士の給料はなかなか上がらないのです。
給料アップの方法
最後に保育士の給料をあげる方法を3つ紹介します。
- 園長や主任に昇格する
- キャリアアップ研修制度を活用する
- 給料の良い園に転職する
所々で私の給料アップの成功例を紹介しています。
ぜひ自分が取り組めそうなもので給料アップを目指してください!
①園長や主任に昇格する
給料をあげる方法の1つ目は、園長や主任に昇格すること。
下の表は厚生労働省の統計を参考にしてまとめた、役職ごとの給料です。
月給 | 年収(賞与込み) | |
---|---|---|
施設長 | 632,982円 | 7,595,784円 |
主任保育士 | 561,725円 | 6,740,700円 |
保育士 | 303,113円 | 3,637,356円 |
月収は賞与1/12込を含む。年収は月額×12ヶ月分で算出
見てわかるとおり、役職がつくと給料が大幅に高くなります。
そのぶん責任も重くなりますが、「給料が高いのがモチベになる」って人は昇格を目指してみるのもいいでしょう。
②キャリアアップ制度を活用する
キャリアアップ制度を活用して給料をあげる方法もあります。
キャリアアップ制度とは、政府による処遇改善の取り組みのひとつ。
従来の役職である園長・主任保育士の他に、新たな役職が3つ新設。
若手や中堅保育士がキャリアを積み上げやすくなりました。
新たな役職は、以下の3つ
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダー
制度を活用できるのは、保育経験3年以上の者。定められた条件をクリアし、研修を受講。研修修了後、役職が発令されれば見事、役職が認定されます。
役職認定後は、以下の役職手当がつきます。
副主任/専門リーダー…月額4万円支給
職務分野別リーダー…月額5千円支給
役職につくと給料を底上げできるのが嬉しいポイント。参加条件はそこまで厳しくないので、気になる方はキャリアアップ制度を活用してみてはいかがでしょうか。
ただし、役職の枠数は各園で上限が決められています。なので、制度を活用したい方はまずは自分の園に確認するようにしましょう。
私は保育士5年目の時に、キャリアアップ制度を活用して「職務分野別リーダー」の役職につきました。
月額5千円の手当で、給料がプラスになって嬉しかったです!
③給料が良い園に転職する
給料をあげる方法の3つ目は、給料の良い園に転職すること。即効性があり、簡単に給料アップを目指せる方法です。
保育士の給料は、都道府県や地域、各園で取り入れている手当によって基本給が変わってきます。
自分の納得のいく給料の園を探して、今より給料アップを目指してみてはいかがでしょうか。
あらかじめ給料が高めの保育園で働いた方が、給料がベースアップして仕事のモチベーションもあがるはずです。
私も転職をして、手取り額をおよそ5万円もあげることができました!
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まとめ:給料が安くて当たり前の状態から抜け出そう
「保育士の給料は安くて当たり前」というのは、保育士の大変さや専門性をよく理解していない人たちの声です。
保育士は子どもの未来を担うプロの仕事。自信を持っていきましょう。
自分自身で「保育士は給料が低くて当たり前」と思い込んでいる人は、もったいないです!
給料アップの方法は複数あるので、理想の給料をぜひ目指してみてください。
- 園長や主任に昇格する
- キャリアアップ制度を活用する
- 給料が高い園に転職する
給料が今より1万、2万、3万とアップしたら何がしたいですか?
自分の「ほしいもの」「やりたいこと」「行きたいところ」を想像しながら、自分にできそうな方法から試してみてください。
以下の記事では、保育士の月収や年収、手取り、ボーナスなど、保育士の給料に関するあらゆるデータをひとまとめにしています。ぜひ参考にしてみてください。